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三笘薫には「感謝しかない」、PK奪取は「南野拓実を意識」。思考を繊細に表現する堂安律は、“フィニッシュ”と“仕掛け”を貪欲に追求【現地発】ゴールへの意欲を色濃く示し続ける2022年カタール・ワールドカップでドイツ、スペインから1ゴールずつを挙げ、一躍、時の人となった堂安律(フライブルク)。昨年末に国内外で凄まじい注目を浴びた男は、1月21日のヴォルフスブルク戦から今季のシーズン後半戦に挑んでいる。リーグ再開後のフライブルクは勝ったり負けたりと出入りの激しい状況。堂安は右MFで全試合に先発出場し、攻守両面で貢献度の高い仕事を見せている。 「『堂安=決める』と見られていることは、良い刺激になっています。それに応えないといけない。ゴールというのは自分の課題。日本のサポーターにはそれが特長だと思われているけど、案外、それが課題というギャップがあります。今はそこを強く意識して取り組んでいます」と、堂安はフライブルクでも「ここ一番で点の取れる男」になるべく、ギラギラ感を前面に押し出しているという。 2月11日のシュツットガルト戦でも、そんな強気のマインドが要所に出ていた。 ご存じの通り、シュツットガルトには遠藤航と伊藤洋輝の両W杯戦士、冬の移籍期間に加わった原口元気という日本人トリオがいる。彼らは堂安のストロングを消そうとトライしてきた。特にポジションが重なる原口は激しいデュエルで自由を奪おうとする。 それだけに、普段のゲームよりも難易度は高かっただろうが、そういったなかでも背番号42は虎視眈々とチャンスをうかがい、15分の強引なドリブルシュートを皮切りにゴールへの意欲を色濃く示し続けた。 前半こそ相手左FWクリス・ヒューリッヒに華麗なミドルを決められ、0-1のビハインドを背負ったフライブルクだが、後半になると主導権を握り返す。 開始5分には堂安のシュートがDFに当たって入ったかと思いきや、惜しくもオフサイドで取り消しに。本人も大いに悔しがった。それでもめげることなく、仕掛けやスルーパス、シュートなど攻めのアクションを起こし続けた。 最もインパクトが大きかったのは、同点に追いつき迎えた終盤の決勝PK奪取。80分、堂安はペナルティエリア内に侵入し、相手CBダン・アクセル・ザガドゥのファウルを巧みに誘った。これがVAR判定の末にPKとなり、ビンチェンツォ・グリフォが確実にゴール。フライブルクは逆転に成功し、このまま2-1で首尾よく勝利。暫定でチャンピオンズリーグ出場圏内の4位をキープした。 ドリブル突破で推進力を見せつける場面も重要な日本人対決を制した堂安は、機嫌が良さそうだった。「相手が前半、タイトに来て、後半はオープンになるというのはブンデスリーガの特徴。それをワールドカップのドイツ戦でもチーム分析として落とし込んでましたし、その感覚は分かっていたので、しっかりタスクをこなしながら、後半にチャンスが来るとイメージしてプレーした。後半からプラン通りに進んだかなと思います。 PK奪取のシーンは南野拓実(モナコ)を意識しながらかな(笑)。ああいう狭いスペースでの突破だったので。ただ、分析の結果、相手の23番のDFが来るというのは分かっていたので、パスを受けた瞬間にムリヤリでも行こうと思った。ちょっとファウルをもらいにいった感じではありましたけど、感覚的には間違いなくファウルだったので、ビデオ判定の時も焦らず、『間違いなくファウルだ』と思いながら見てました」 満足そうにこう語った通り、試合運びも、決定的な仕事も、全て計算の上だったことを明かす堂安。感覚的に見えて、実は想像以上に物事を考えながらピッチ上で繊細に表現するのが堂安なのだ。 そのうえで、この日はドリブル突破で推進力を見せつけるシーンも目立った。特に際立ったのが、対面に位置したクロアチア代表の左SBボルナ・ソサに対する局面打開。全てで勝てたわけではなかったが、W杯のリベンジを果たしたいという野心を持って突き進んだという。 「間違いなく仕掛けでは抜け切れるようになっていますし、クロアチア戦で負けた相手のソサがいたので、自分の実力を測る良い相手だと思ってプレーしました。 やっぱり個で打開できる選手は貴重だと思いますし、(三笘)薫(ブライトン)や(伊東)純也(スタッド・ドゥ・ランス)に自分も刺激を受けてプレーしてるところではあるので。プレースタイルが違うので、全部を真似しようとは思わないですけど、仕掛けの部分は課題だと感じてますし、ワールドカップ後に自分を客観的に分析しながらできていると思います」 語気を強める堂安のみならず、前田大然(セルティック)や浅野拓磨(ボーフム)もW杯を経て、仕掛ける意識が高まっている。それはやはり「個の力を上げないと日本代表が8強の壁を破ることは難しい」という強い自覚が各々にあるからだろう。 「ゴールもアシストも10・10で」三笘が先陣を切ってプレミアリーグで一世を風靡しているのだから、同じ東京五輪世代の堂安もやらないわけにはいかない。「薫君には本当に感謝しかない。これほど刺激をくれる存在というのは、そういないので。今の彼は日本代表の全選手、日本人選手全員に刺激を与えてくれていると思います。自分も『やらなくちゃ』って思いながら、毎日毎日トレーニングしてます」と目の色を変えているのだ。 2017年のU-20W杯のイタリア戦では、マラドーナばりの4人抜きゴールを決めるという離れ業をやってのけたこともある堂安。もともとドリブル突破は得意だった。潜在能力に磨きをかけ、さらに最重要なフィニッシュという課題をクリアしていけば、もっともっとドイツでも数字がついてくるはずだ。 現時点ではリーグで2点、カップ戦で2点の合計4点だが、最終的には公式戦で10ゴールという数字を目ざし、ここからの終盤戦に取り組んでいく覚悟だという。 「ゴールもアシストも10・10で行きたい。今は4・6なので。ゴールを増やしながら、アシストは仕掛けとかパス出しとかで勝手についてくると思う。満足せずに『結果・結果』と思いながらプレーしていきます」 ここから堂安がどこまで突き抜けていくのか。三笘に追いつき追い越せで勢いを見せてほしいものである。 取材・文●元川悦子(フリーライター) (出典:SOCCER DIGEST Web) |
三笘薫の活躍に刺激を受けて、貪欲に個の力で打開して決めきる意識でプレーしている堂安律。まだゴールの結果は出ていないけど、今後の活躍に期待!