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リバプールで遠藤航の信頼度が上がった根拠。移籍当初から何が変わったのか?【分析コラム】


 プレミアリーグ第13節、マンチェスター・シティ対リバプールが現地時間25日に行われ、1-1のドローに終わった。この試合で遠藤航は85分から出場。アディショナルタイムを含めて10分弱の出場だったが、それでもユルゲン・クロップ監督からの信頼度が上がったと言い切れる。その理由とは。(文:安洋一郎)


●プレミアリーグ屈指の大一番に遠藤航が出場

 チャンスの数からして、どちらかと言えばホームのマンチェスター・シティに勝利のチャンスがあった。しかし、決定機を決められなかったことで勝機を逃したが、それでもグアルディオラ監督が「信じられないほど素晴らしい試合だった」と発言するほど、両者は拮抗した戦いをみせていた。

 ジョゼップ・グアルディオラとユルゲン・クロップという、近年のプレミアリーグのレベルを大幅に引き上げた二人の名将対決は1-1の引き分けに終わった。

 ダービーマッチに近い熱気があるこの一戦は、リーグの最終順位に影響を及ぼすほど強い影響力がある。

 そんな大一番でリバプールの遠藤航は85分からアレクシス・マクアリスターに代わってピッチに立った。アディショナルタイムを含めて10分弱のプレーだったが、この短い時間であってもクロップ監督の中で彼の信頼度が上がったと言い切れる。


●指揮官からの遠藤航の信頼度が上がった根拠

 正直なところ、これまでの起用法を見る限り、クロップ監督の遠藤への信頼度はかなり低かったように思う。

 彼が第12節までにプレミアリーグで起用された7試合は「①怪我人」「②退場者もしくは累積警告による欠場」「③2点差以上のセーフティリード」という3つの条件のうち、どれかに当てはまっていた。

 長くなるので、それぞれの条件を上記の「①②③」で表すと、デビュー戦のボーンマス戦は①&②、2戦目のニューカッスル戦は①、3戦目のアストン・ヴィラ戦は③、4戦目のウェストハム戦は③、5戦目のトッテナム戦は②、6戦目のノッティンガム・フォレスト戦は③、7戦目のブレントフォード戦は①&②といったところだ。

 逆に起用されなかった試合を見ると顕著で、ウルブス戦は90+1分まで1点差リード、ブライトン戦は引き分け、エバートン戦は90+7分まで1点差リード、ルートン戦は引き分けと、怪我人や退場者がいない状況での接戦では出番がなかった。

 これらを簡潔にまとめると、遠藤はチーム内で何かしらのアクシデントが起きた場合、もしくは余裕を持った試合展開以外では起用されなかったと結論づけることができる。

 1点リードや同点の際に起用されなかったのは、低い位置でのボールロストを恐れてのことだろう。最近は減ってきたが、UEFAヨーロッパリーグ(EL)の試合では不用意な形でボールを奪われてシュートに持ち込まれるという場面もあった。

 こうしたことを踏まえると、シーズンの最終順位を左右する可能性のあるマンチェスター・シティとの大一番にて、同点のタイミングで起用されたことは指揮官の中で遠藤の評価が上がったと言える。


●クロップ監督の期待に応えた遠藤航のプレーと課題

 アディショナルタイムを含めて10分弱となったマンチェスター・シティ戦での出番だが、その中でクロップ監督から与えられた役割を実行したと思われる場面があった。

 それが90+3分のシーンだ。センターサークル付近でジェレミー・ドクがコーディ・ガクポからボールを奪い、カウンターに転じようとした場面で遠藤がタックル。ファウルの判定となり、イエローカードが提示をされたが、相手のチャンスの芽を潰したという意味では大きなプレーだった。

 この試合を通じて、リバプールは世界屈指のドリブラーであるドクに対してダブルチームでマッチアップするなど、かなりマークを強めて対応していた。それでもこのベルギー代表FWはデータサイト『Sofa Score』のスタッツ上では15回中12回のドリブルを成功させるなど、個人技でリバプールの守備陣を攻略していた。

 これだけチームとして警戒をしながら、突破される場面が多かったドクに対して、ファウル覚悟で潰し切ったのは良い判断だったと言えるのではないだろうか。空回りしてファウルすらできなかったリバプールデビュー当初と比較をすると、着実に成長をみせている。こうした積み重ねが信頼度を高めたのかもしれない。

 しかし、そもそもの話をすると、ガクポがドクにボールを奪われたのは、その前の遠藤のパスがオランダ代表FWの前に空いていたスペースではなく、足下に処理しづらいデコボコと弾んだ緩いパスを出したことが大いに影響している。

 この場面でガクポの前にスムーズなパスを出せていたら、また違った展開となっていただろう。細かいプレーではあるが、トップレベル同士の試合ではワンプレーが致命傷になり兼ねない。指揮官やチームメイトからの絶対的な信頼を得るためには、周りの選手がプレーしやすいような気遣いが必要だ。スタメン定着に向けてはさらなる成長が望まれる。

(出典:フットボールチャンネル)                


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首位攻防戦は痛み分けのドロー決着。
85分からの途中出場と時間は短いながら、この大一番に起用された遠藤航。
このレベルの試合でやるためには求められるものは多い。
絶対的な信頼を得るためにも、さらなる活躍に期待!!