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“実質7バック”の相手に1得点・1アシスト。10番・堂安律が前面に押し出した「泥臭さ」と「チャレンジャー精神」


フレッシュな状態で自身2度目の予選に

 2026年北中米ワールドカップで優勝を本気で狙う日本代表にとって、アジア予選は絶対に通らなければいけない道。相手が格下だろうが、点を取って勝ち続けるしかない。

 11月16日に行なわれたアジア2次予選の初戦、ミャンマー戦はまさにそう。「事実上の7バック」を採用した相手は「失点数を極力減らすこと」を最優先に向かってきた。

 まさに特殊なゲームだったが、日本は上田綺世(フェイエノールト)のハットトリックなど5ゴールを奪って圧倒。W杯予選の初戦では苦戦するというジンクスを打ち破る好スタートを切ることに成功した。

 マン・オブ・ザ・マッチの上田ほか、チーム2点目を叩き出した鎌田大地(ラツィオ)や、2アシストの南野拓実(モナコ)はもちろん目立っていた。その傍らで、右サイドでフル稼働し、1ゴール・1アシストという結果を出した堂安律(フライブルク)の闘争心と泥臭さは、やはり目を見張るものがあった。

 第一次森保ジャパン時代の序盤は、右サイドのファーストチョイスと位置づけられていた堂安。だが、現体制では伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)を追走する立場にいる。6月にエースナンバー10を与えられながら、序列を上げられないジレンマを本人は消化しきれず、9月シリーズの時はかなり感情的になっていた。

 それでも、10月に親知らずの治療のために代表を離れた間に、メンタル面を整理。今回はフレッシュな状態で自身2度目の予選に臨んだという。

「こっち(控え)が性に合ってるかなって。チャレンジ精神を持って今までもやってきましたし、一度も自分が天才だと思ってキャリアを歩んできた覚えがない。不調の時でも『なんか堂安やってくれるんじゃないか』と思ってもらえると自分で思ってるんで、期待を持たせられる選手になりたい」と、試合前日にも野心を前面に押し出したのだ。

 ミャンマー戦では序盤から仕掛けの意識を出し、開始4分には鎌田のチャンスをお膳立てする。クロスやリスタートのキックの回数も多かったが、どうしてもボールが低く、敵の守備の網に引っ掛かってしまう。

「最後のボックス内での精度が大切だけど、前半は質が低かった」と本人も反省しきりだった。

 そういったなかでも、上田と鎌田が得点し、迎えた前半アディショナルタイム。クイックリスタートから上田の動き出しを見逃さずに鋭いスルーパスを通し、チーム3点目をお膳立て。この時点でほぼ勝利を決定づけた。

 後半はパフォーマンスも改善。クロスバーを直撃した惜しいシュートシーンもあった。

「ゴールを取れなかったら不甲斐ないと思いながら試合中やっていた」という本人にしてみれば、焦燥感も少なくなかったが、「絶対に決めてやる」という鼻息の荒さが、86分のゴールにつながる。

「1点じゃ物足りない」

 守田英正(スポルティング)の浮き球のパスに迷うことなく飛び込んだ10番は、左足でピタッとボールを止め、ワンタッチしてから確実にシュートを決め切った。

「(古巣ガンバ大阪の本拠地)パナスタではまだ決めていない」と前日にもコメントしていたが、そこで得点した安堵感もあったのだろう。

「今日は大量得点できる相手だけど、相手に合わせるのではなく、自分たちの基準で貪欲にやるのが大事。個人的にも最後まで貪欲にやったのが良かった」と言う通り、堂安は90分間、アグレッシブさを示し続けた。

 そういうギラギラ感が堂安の最大の魅力であり、持ち味だ。10番を与えられたことで、責任感や義務感を覚えることも多かったのだろうが、様々な外的要因に関係なくゴールに突き進めるのが彼である。良い意味での割り切りが見られたことは、今後にもつながりそうだ。

 もちろん、伊東は今の森保ジャパンに不可欠なピースで、三笘薫(ブライトン)が離脱している今回は絶対的エースと言っていいくらい。その彼を蹴落として再びレギュラーに返り咲くのは、非常にハードルの高いことだが、それをやって初めて堂々たる10番に君臨できるのだ。

「この背番号のおかげで自分に厳しくできている。1点じゃ物足りない。また厳しくやっていきたい」と堂安は新たな決意も口にした。

 欲を言うなら、もっと仕掛けの部分で工夫をつけてほしいところだ。ドリブルで相手を剥がし切るだけの駆け引きや、緩急をつける動きを研ぎ澄ませることで、堂安はもっと輝けるだろう。

 フィニッシュに関しても精度により磨きをかける必要がある。それは本人も前々から言い続けている点。フライブルクでも親知らずの問題があり、今季はまだリーグ戦の1点にとどまっているが、所属先の実績をチェックし続けている森保一監督へのアピールとしては物足りない。

 堂安が常に2022年カタールW杯の時のような決定力を発揮できる選手なら、どんな監督でも最優先に使う。そういう部分で、自分自身が言うように、より厳しさを持って取り組んでほしい。

 次のシリア戦(21日/ジッダ)はベンチスタートが濃厚だが、それこそカタールW杯のようなジョーカーとしての凄みを見せるチャンスだ。

 プレー時間や環境に関係なくチームを勝たせる仕事ができてこそ、堂安は誰もが認める10番になれる。吹っ切れた今こそ、貪欲に前進し続けるべき時だ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

(出典:SOCCER DIGEST Web)                
 (出典  @jfa_samuraiblue)

相手チームに合わせるのではなく、「自分たちの基準で貪欲にやるのが大事」とのコメントしたように、90分間貪欲にゴールを狙い続けた堂安律。伊東純也や久保建英など、ライバルひしめく攻撃陣のポジション争いに生き残るためには、結果を出すしかない、という気持ちで全選手がプレーしていた。日本代表の選手たちが全員その意識でプレーすることが、レベルアップ、選手層の底上げにつながる好循環、森保ジャパン躍進の原動力になっているのは間違いない!!


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