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森保監督の新しい「懐刀」は名波氏か前田氏か?
【コラム】金子達仁

 28年ぶりの五輪本大会出場を果たしたアトランタ五輪代表を取材していた当時、わたしにとってのメキシコ五輪は教科書の中の歴史だった。

 史実としては知っている。当事者を取材したこともある。それでも、アマチュア時代の栄光が、すでにプロ化していた日本サッカーにどんな関係があるのか、ピンときていなかった。白状すれば、大して役に立たない昔の栄光を振りかざす面倒くさい世代、と思うことすらあった。

 なので、いささか愕然(がくぜん)とする。あの震災から28年が経(た)ったことに。かつては教科書の中の歴史でしかなかった28年前の出来事が、いまなお鮮烈な記憶として残っていることに。

 ただ、それはあくまでも56歳の感覚であり、若い世代にとっては教科書の中の歴史としか感じられなくなっていくのだろうな、とも思う。わたしにとっては依然生々しいいわゆるドーハの悲劇は、もう30年も前の話になる。

 さて、そのドーハの経験者でもある森保監督率いる日本代表の、新たな体制が発表された。斉藤俊秀氏、下田崇氏の2人が留任し、新たに名波浩氏、前田遼一氏が新コーチとして加わった。反町委員長によれば、これは「森保監督の意向を最優先した」人事だという。

 現役時代の名波氏は実に色気のあるゲームメーカーだった。パンチ力のあるストライカーだった前田氏は、最近の日本では少なくなった典型的な背番号9だった。もっとボールを保持したい、決定力のあるストライカーが欲しいと森保監督が考えたのであれば、まあ分からなくはない人事である。

 とはいえ、ジーコがサッカーを教えたらその選手がジーコになれるわけではないように、名波氏が、前田氏がコーチになったからといって、日本代表の問題が解消されるとは思えない。おそらくは森保監督も、自分にない部分を補ってくれればいい、ぐらいの心づもりなのではないか。

 あくまでも個人的な推測なのだが、森保監督が新たなコーチとして名波氏、前田氏を指名したのは、名波だから、前田だからという理由と同じぐらい、自分より下の世代、ということが重要だったのではないか。

 森保監督自身、代表監督になる前にコーチとしてW杯ロシア大会を経験している。そのことの持つ意味の大きさは、彼があちこちのメディアで語っていたが、同じことを、自分より下の世代に経験させたかったのではないか。

 なったことはないし、なれるとも、なりたいとも思わないが、代表監督という立場が、とてつもない重圧にさらされるということは容易に想像がつく。時に自分一人では抱えきれなくなる孤独や重圧を和らげるために多くの監督は知恵袋、あるいは懐刀と呼ばれる存在を身近におく。カタールでの森保監督にとって、それが1歳年上の横内昭展氏ではなかったか。

 つまり、横内氏には、代表チームの強化だけでなく、監督を支えるという仕事もあった。

 さて、今後は誰がその役を担うのだろう。

 知恵袋は、懐刀は、ほぼ例外なく、試合中は監督の隣に座る。クライフにとってのレシャック、ザガロにとってのジーコもそうだった。ならば、最初の親善試合で誰が森保監督の隣に座るのか。個人的には、そこに注目したいと思っている。


(金子達仁=スポーツライター)
(出典:スポニチアネックス Sponichi Annex)                


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名波浩が横内氏の代わりにみたいな記事をどこかで見たような気もするけど、果たして森保監督は決定したコーチ陣をどのように使い、どのようなチームにするのか。誰が監督の右腕になるのかにも注目!