いよいよ運命の一戦!!
スペイン相手にどんなサッカーを見せてくれるか、楽しみ!!


(出典 portal.st-img.jp)

「スペインが嫌がる秘策2つ」を仕掛けろ!鎌田大地が知る「バルサ粉砕3バック」、もう1つのヒントは田中碧の言葉「1枚残さずに」


カタールW杯に臨む日本代表。現地取材するスポーツライター飯尾篤史氏による“同時進行ドキュメント”で随時チームの内情・変貌ぶりを追っていく。
 左シャドーの鎌田大地がインテリオールのペドリを背中で消し、ピボーテのブスケッツを間接視野に入れながら、センターバックとサイドバックに睨みを利かせる――。

 日本時間の12月2日早朝に行われるスペイン戦の想像ではない。実際にピッチ上で展開した光景だ。

 4月14日、ヨーロッパリーグ準々決勝の第2戦。鎌田の所属するフランクフルトは敵地でバルセロナを3-2と粉砕し、準決勝へと駒を進めた。

 鎌田にとってバルサは、少年時代からの憧れのチームである。ガンバ大阪ジュニアユース時代には毎週のように試合をチェックし、スペイン遠征も経験した。グアルディオラに率いられた当時のバルサは、シャビ、イニエスタ、メッシらを擁してこの世の春を謳歌していた。

 それから十数年が経ち、憧れのチームから勝利をもぎ取ったのである。

「バルサは先を行っている感覚があった。でも戦ってみて、リスペクトし過ぎる自分がいたなと思いましたね」

 だから、鎌田はスペインが勝てない相手だとは思っていない。

「失点せずにゼロで進めて、コンパクトに守備をやっていけば、チャンスは必ず訪れる。どれだけいい守備からいい攻撃に繋げられるか、だと思います」

スペインにも「前もっていろんな準備を」

 11月27日のコスタリカ戦を終えてから、日本代表チームは急ピッチでスペイン対策を落とし込んでいる。

「戦術のところでチームから指示が出ているし、選手同士でもいい話し合いができている。この3試合のなかで一番くらい議論が出ているので、スペイン戦をいい状態で迎えられるかなと」

 そう語ったのは、相馬勇紀である。コスタリカ戦でW杯デビューを飾った韋駄天は、ディスカッションの様子をさらに詳しく伝える。

「5、6人でいろんな方面から話し合いながら、みんなが意見しています。中心となるのは(吉田)麻也さんですけど、そこにコーチングスタッフもいて、みんなで話している感じ。選手、スタッフでボードを見ながら話しています」

 とはいえ、コスタリカ戦翌日は戦術トレーニングをこなせなかったから、準備期間はわずか2日。この間に対戦国についての分析を、チームに浸透させられることができるのか――。

 そんな疑念を、森保一監督は振り払う。

「W杯で対戦するのは以前から決まっていましたし、スペインの中心選手や戦術面に大きな変化はないので、前もっていろんな準備をしてきました。そのうえで直近2試合と何が違うのか、我々が新たに何を準備したほうがいいのかは考えていきたい」

 W杯の組分けが決まったのは4月1日のこと。それ以降、テクニカル担当がスペインの試合を入念に分析し、丸裸にしてきたという自信があるのだろう。


全体練習に復帰した冨安が先発起用可能なら…

 さらに森保監督は、メンバーに関してこんなふうに言及した。

「この試合のベストということで選手を起用したいと思いますし、3戦連続して出る選手もいるかなと思います。そこは今のチームのコンディションと相手との噛み合わせのなかで決めていきたいと思っています」

 だとすれば、GK権田修一、DF吉田麻也、DF板倉滉、DF長友佑都の3試合連続スタメンの可能性は低くない。

 また、前述したようにバルサ撃破の経験を持つ鎌田の連続起用があってもおかしくない。

 右ひざを痛めた遠藤航はコスタリカ戦翌日から結局、最後までトレーニングに参加しなかった。遠藤の欠場は決定的で、田中碧と守田英正の元川崎フロンターレコンビに中盤の底を託すことになる。

 一方で、右太もも裏の違和感で別メニュー調整が続いていた冨安健洋が29日、全体練習に合流した。その事実がすなわち、スペイン戦のスタメンを決定づけるものではないが、もし先発起用が可能ならこれほど心強いことはない。

 すでにお気づきかもしれないが、スペイン戦のスタートは3バックを予想している……いや、推奨したい。

 3バックは右から板倉、吉田、冨安。右ウイングバックには伊東純也、左ウイングバックには長友。右シャドーには久保建英、左シャドーには鎌田、1トップには前田大然という陣容だ。


前からのプレス、守備ブロック構築の両方に対応

 今の日本代表にとって3-4-2-1はオプションではなく、もはや主戦システムとなっている。バルセロナを打ちのめしたフランクフルトも、3-4-2-1がベースの可変システムで戦っているからだ。

 鎌田は間違いなくミーティングやディスカッションの場で、経験者としてのアイデアを披露しているだろう。そして何より森保監督自身が、フランクフルト対バルサの第1戦を現地で視察している。

 フランクフルトのメカニズムはこうだ。

 3-4-2-1をベースとした5-2-3のような形から積極的に前方へとプレスをかけ、パスワークを遮断したり、ボールをサイドへ誘導してボールホルダーを激しく潰す。

 日本に置き換えれば、1トップの前田がピボーテのコケ(もしくはロドリ)を監視し、シャドーの久保と鎌田がインテリオールのペドリとC・ソレールへのパスコースを切りながら、センターバックにサイドへとパスを出させるイメージか。

 狙うはボール奪取からのショートカウンターやロングカウンター。だが、ボール保持も織り交ぜて、なるべく体力の消耗を抑えたい。

 さらに押し込まれた際には5-4-1でリトリートして守備ブロックを組み、ライン間でスペインの選手たちに自由を与えない。ブロック内にボールを侵入させないようにしてゲームを進めていく。


スペインを嫌がらせるための“もうひとつの秘策”

 そして、もうひとつ秘策を用意しておきたい。

 彼らを驚かせることで、簡単にペースを握られないようにするのだ。

 その点でヒントとなるのは、コスタリカ戦翌日の田中の言葉である。

「前半から行かないといけないのは間違いないと思います」と田中が言うと、取材陣から「ドイツでも、スペインからは前から行っても奪うのが難しかったが」という質問が飛ぶ。すると、田中はあくまでも私見だと強調したうえで、こう答えたのだ。

「噛み合わせの問題だと思います。ドイツも後ろ(ディフェンスライン)で1人余らせたら、そりゃアンカーも空くでしょう。それでセンターフォワードもあれだけ落ちてくるので、取りに行けないのは間違いない。そこで自分たちがドイツ戦のように1枚残さずに行けばチャンスができる。逆に1枚残さないといけない状況になれば、どこを捨てるのかが大事になる。センターバックに時間を与えると、オリンピックのときみたいになってしまいますし、どこに時間を持たせるのかはすごく明確にしていかないといけないと思います」

「1枚残さずに行けば」というのは、マンツーマンで前からハメに行くということだ。つまり、ドイツ戦後半のような戦い方のイメージだ。

 ドイツは3枚回しだったから、日本は3トップで応戦したが、スペインは4枚回しだから、日本は前田と久保がセンターバックに激しくプレスを仕掛け、両ウイングバックの長友と伊東は両サイドバックに激しく寄せて自由を奪いたい。


時間限定プランとして相手陣内で“ひとり一殺”を

 スペインが誇る中盤の3人には、鎌田、田中、守田の3人が目を光らせる。相手3トップに対しては冨安、吉田、板倉の3バックが応戦する。

 後ろが数的同数になるのはリスキーに感じるかもしれないが、これは前半・後半の開始15分間など、時間限定のプラン。3-5-2に変えてフォーメーションをしっかり噛み合わせ、相手陣内で“ひとり一殺”を敢行し、スペインを嫌がらせるのだ。

 もちろん、スペイン戦でも堂安律、南野拓実、三笘薫、浅野拓磨といった“決める男”たちは、まだか、まだかと自分の出番を待ちわびているに違いない。

 彼らをどのようなシチュエーション、どのようなタイミングで起用できるか。


森保監督「このチームと戦えることが楽しみ」

 スペイン対ドイツ戦を見た森保監督は、第3戦の相手をこう評する。

「うまくてテクニカルなチームだとは思っていましたけど、それ以前に激しく厳しく、その中で技術を発揮し、連携・連動できる世界最高峰のチームだなと。日本が学べることは多いなと思いつつ、このチームと戦えることが楽しみになりました。試合で勝ってスペインを超えていきたいという気持ちです」

 ベスト8以上を目指すなら、どのみち強豪国を超えていかなければならない。ドイツからあげた大金星だけでは足りないのだ。

 スペインとの“決勝”は、日本の総力を懸けた一戦となる。

(出典:Number Web)