シントトロイデンを拠点に
多くの日本人選手が欧州で活躍することに期待!!


遠藤航、鎌田大地、冨安健洋…ベルギー1部・シントトロイデンは欧州での飛躍の登竜門【サッカー】


 サッカーのW杯カタール大会(20日開幕)に臨む日本代表MF遠藤航(29)=シュツットガルト、MF鎌田大地(26)=フランクフルト、DF冨安健洋(24)=アーセナル=はベルギー1部・シントトロイデンで進化の土台を築き、飛躍へとつなげた。「日本サッカー欧州拠点化」をプロジェクト理念の中枢に掲げる登竜門で、3人はどのように牙を研ぎ、どのようにステップアップしていったのか―。最高経営責任者(CEO)を務める立石敬之さん(53)に成長、育成の裏側を聞いた。 


 「ベルギーでダメなら日本に帰りますから」

 2018年8月、フランクフルトから期限付きで加入した鎌田は笑って、そうつぶやいたという。 立石CEO「自信家で、天才肌の選手。自分の意思をしっかり持っていて、曲げない。そんな男が実力で鼻をへし折られてやってきた。ある意味、相当な覚悟があったと思う」

 鳥栖から鳴り物入りで移籍したフランクフルトでは、ほぼ“構想外”の扱い。屈辱にまみれた裏側で、鎌田は腹をくくっていた。当初はスーパーサブ起用だったが、定位置を確保するのに時間はかからなかった。センターフォワードの相棒として、「9・5番」(センターフォワードとトップ下の間)のポジションで自由を与えられると、高い技術力と類いまれな攻撃センスを十分過ぎるほど発揮した。

 2018~19年シーズンは34試合出場、15得点7アシストの大活躍だった。翌シーズン前、フランクフルトのキャンプに合流すると、“放出”候補から評価は一転。ヒュッター監督は「ダイチはまるで別人じゃないか」と驚いたという。

 「大地が最も変わったのは勝敗に責任を持てるようになったこと。そこに自信を見て取れた」



 W杯ロシア大会のメンバーだった遠藤(当時浦和)の印象は、「ボールを奪えない」選手だったという。 周囲と連係、連動すれば力を発揮するが…。独力でボールを奪い切る力はなく、たくましく、力強い「デュエル王」の姿はなかった。

 「選手が半年ごとに入れ替わるから、チームの継続性、連係はすごく難しい部分がある。そうなると、個の戦いが多くなる。極端な話、やられたら個人の責任になる。そこで、航は違う自分に変えていこうとチャレンジしていた」

 連係がない分、単独で奪い切るしかない。良い、悪いではなく、サッカーが違うのだ。個の責任、個の重要性がよりクローズアップされる環境で、試行錯誤しながら、個の強調によって遠藤の成長は促された。「デュエル力」の下地を着実に蓄え、より守備が整備されたドイツで開花させた。


 
 冨安がシントトロイデンへ移籍したのは19歳になったばかりのころだった。福岡でのJ1出場がわずか10試合の「無印」だったが、逸材として高い評価を受け、「W杯や五輪を見て分析した中で、日本代表のセンターバックの育成が急務だと考えた。将来性のある冨安を計画的、意図的に連れてきた」という。

 当初、左足首の故障に加え、環境、言葉、プレーのギャップもあり、「ベルギーに来てから半年近くは試合にも出られず、本当に苦労していた」。ただ、環境への順応、試運転は半年で十分だった。新シーズンに入ると、周囲も驚くような進化の曲線を描いていったという。

 「縦パスを入れられるようになったり、技術的な課題をひとつずつ、着実にクリアしていった。性格的にまじめで、真摯(しんし)に取り組む。生活の全てをサッカーに注ぐという感じで、ぐんぐん伸びた。すごいスピードで成長していった」


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 17年11月にDMMが経営権を取得後、シントトロイデンはチーム強化と競技力の向上を図るとともに、欧州に挑戦する日本人選手の「登竜門」として機能した。いまや3人は日本代表の中心軸となり、シントトロイデンが強化の一端を担ったと言っても過言ではないだろう。とはいえ、3人のような“成功例”はあっても、確実な方程式はないという。  「選手それぞれシントトロイデンに来た経緯も背景も違う。それぞれの育て方、はまり方もある。きっかけがあって、入ってきた年齢、出口も違う。出た先の活躍の仕方も違う。課題も違う。性格も違う。全員、違うアプローチをしないと、成功するのは難しい」  日本人の飛躍の一助となるべく、最初は手を差し伸べる。だが、手取り足取り、丁寧に成長を後押しするようなことは決してしない。

「寄り添わないようにしている。声をかけるタイミングだけを見ている。(困難な状況で)話を聞くと、選手は『監督がどうだ、こうだ』と言う。だけど、今までの経験上、特に海外ではそれでは決して前進しない。返す言葉としては、『それでも、やるしかない』。自分で解決するしかない。理不尽さも含めて、ここで対応できないと、次はもっと大変になる。だから、過保護になり過ぎないように接している」

 遠藤、鎌田、冨安も過程は「三者三様」だった。ただ、3人に共通するのは自らの課題と向かい、自ら解決策を見出したこと。そこに、尽きるのかもしれない。  「今後は(遠藤、鎌田、冨安のような)選手たちをたくさん輩出することと、さらに上へ行ける選手を何人、出せるか。素材との出会いもあるが、日本代表に必要とされるGKや両サイドバック、『9番(ストライカー)』も意識して取ろうと思っている」

 ▼シントトロイデンVV ベルギー北東部リンブルフ州の都市シントトロイデンに1924年創設。1部リーグでは65~66年シーズンの2位が最高成績。日本代表GKシュミット・ダニエルや香川真司、岡崎慎司ら日本人5人が所属。2017年11月にDMM.comグループが経営権を取得、18年1月に元FC東京GMの立石敬之さんが最高経営責任者に就任。本拠地はスタイエン(1万4600人収容)。
(出典:中日スポーツ)                


(出典 www.football-zone.net)